センスや才能なんて気にしなくても、誰だってデザイナーになれる。

その他

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この業界に携わって20年ほどになります。
自分がデザイナーという仕事につく前は、デザイナーなんて余程の才能やセンスがなければなれるわけ無いし、ましてや自分のように絵も満足に描けない人間にはとうてい無理な話だ、なんて考えていました。
しかし、今は職業・デザイナーになって、20年が経とうとしています。
ほんとに不思議なものですが、実はこのデザイナーという職業、なにも特定の才能を持った人にしかなれないというわけではなく「目線を変えれば誰だったデザイナーなんだ」ということを今日はお話したいと思います。

デザイナーを志したきっかけ

僕自身は高校卒業後2年間の浪人、結局大学へは進学せず、20〜22歳の頃まで普通にフリーターとしてキデイランドでアルバイトしていました。
僕のいた売り場はパーティーグッズやカードゲーム、フィギュア、ミニカーといったものを扱っていたところで、毎日社員さんやバイト仲間と一緒に楽しく過ごしていました。
そんな時社員さんに言われたのが「お客さんの目線になって、商品の見せ方をかえてみ。」ということでした。
ただ言われたとおりに並べるのではなく、売り場を訪れるお客さんの行動をチェックし「どういうふうに商品を手に取るのか」「なぜこっちの商品には目がいかないのか」ということを見るようになりました。

こうやって日がな一日ずっと見ていると様々な問題点が見えてくるんですね。
例えば

  • 商品を置く高さ
  • 商品の並べ方
  • 周りの商品との組み合わせ
  • 通路の幅
  • ポップの書き方
  • ディスプレイの見せ方
  • 店内の蛍光灯の明るさやスポット照明の当て方
  • お客さんの購入に至るまでの行動
  • 清掃の仕方

こういった一つ一つの問題を解決するために仮設を立て、社員さんやバイト仲間に説明し、解決策を実行してみる。
その繰り返しで、売り場の売上は伸びていきました。
こういったことが楽しくて、好きになって一時期はソニープラザの社員採用の面接まで受けて受かりはしたものの、当時キデイランド本部から出向されていた部長さんの「こんなん好きやったら、こういう仕事あるんやで」の一言でデザイナーを志すことになりました。

デザイナーの仕事とは

デザイナーというとファッションデザイナーやグラフィックデザイナー、最近ではウェブデザイナーと言った仕事を思い浮かべる方が多いと思いますが、その多くは「表層的なデザイン」というイメージに縛られているかと思います。
例えば

  • きれいな洋服をつくる
  • きれいなポスターをつくる
  • きれいなホームページをつくる
  • きれいな・・・・

と言った具合です。

デザイナー=きれいなものを、かっこいいものをつくる
というのが一般的なデザイナーに対するイメージではないでしょうか?
しかし、それはあくまでも結果に過ぎません。
本当のデザイナーの仕事というものをざっくり説明すると「情報を整理し、課題を見つけ、解決するための仮説を考え、行動する」というものです。
このうち「行動する」のところだけにフォーカスが当たると、先のようなイメージが定着してしまうのです。

しかしこのデザイナーの仕事といわれるもの、特にデザイナーに限ったものではありませんよね?
例えば会社の人事の方、自分は人事だからデザインなんて関係ないし、絵も描けないから自分にはわからない、と言われる方多いと思います。
しかし「どうしてこうも新卒社員が集まらないんだ?どこに問題があるんだろう?もしかしてあそこか?解決するにはこうしなきゃいけないな。」といったことを考えると思います。
これがデザイナー的な考え方、デザイン思考と呼ばれるものの一番簡単なところだと思います。

少し前に、異業種交流会で管理栄養士の女性お二方と話をすることがありました。
僕の仕事の話をするとお世辞とはいえ「すごいですね〜」「デザイナーさんってすごいセンスが要りますよね〜」なんてことを言われました。
しかし僕からするとこの管理栄養士さんの方がよほど素晴らしい。
例えばお二方が食を通して子どもたちの将来や日本の未来を考えたい、という信念を持って行動すれば立派なソーシャルデザイナーだと考えられます。
行動の行く先は何も会社に向けてだけではなく、社会へ向けてしまってもいいのです。

そう考えると誰だってデザイナーになれると思いませんか?

最後に

実際にはデザイナーの仕事はもっと多くの人が関わって、考えるべきことも多いので、あくまでも上記の内容は簡略化した一例です。
ただデザイナーにとって重要な3つのことは

  1. 混沌とした情報を整理する
  2. 整理された情報の中から課題を見つける
  3. 仮説をたてる

これだけです。

最後の「行動する」を上の重要なポイントに入れなかったのは、実際に行動するのはデザイナーじゃない場合もあるからです。
例えば課題が商品ではなく物流に問題がある場合は、デザイナーと物流の担当者が話しあうこともあります。

この3つを頭のなかでずっと巡らせることができれば、職種にかかわらず誰だってデザイナーです。
なにも仕事のことだけじゃなく、プライベートのことでも何でも構いません。

絵だって上手に描ける必要あありません。
僕自身、絵を描くのはトラウマなくらい苦手で、学生時代の課題(建築パース)も1年の途中から3DCG(Strata Studioなど)で作成していたぐらいです。
今でもそれは変わりません。
絵が描けなくても、伝わりさせすればいいのですから写真だって文章だってなんだって構わないと思います。

一般にデザイナーと言われる人がちょっと特殊に見えるのは、

  • 同じことをずっと考え続けられる
  • 他の人よりもほんの少し発見する力がある
  • 他の人よりもほんの少し仮説をたてる想像力がある

といったことがあるからだと思うのですが、これらは知識と慣れの問題です。

たとえサラリーマンの方であっても経営者であっても、学生や主婦であっても、このデザイナー的思考を普段の生活の中に取り込めば、もっと色んなモノが見えてくると思います。
工場の生産性を上げる、家事の効率化を考える、勉強をスムーズに進めるためには。。。
もしかするとそこから新しい機械が生まれたり、家事サービスのアイデアを思いついたり、効率的な参考書のアイデアが生まれるかもしれません。
様々な情報の中から「なぜ?」という視点と「もしかして!」という仮説をたてること。
これができれば誰だってデザイナーになれるのです。